TinkerBellSound製ストラトキャスターピックアップについて

掲載日

ST_2解説:Cougen Koizumi
(TinkerBellSound製Pickupの設計及び作成者)


もし貴方が今使っているギターの音質に満足されているならここから先の長い文章を読む必要はありません。長い時間を使わずお気に入りの音を楽しんでください。しかし、どこかに不満があるならこれからの説明文に問題解決の糸口を見つける事ができるかもしれません。

まず、下記の動画の音を聞いてみてください。

この動画は基本的に新開発アンプのための説明ですがここに登場する1971年製ラージヘッドと1965年製ボディーと1957年製テレキャスターネックを組み合わせたStratocasterのPickupはTinkerBellSoundで販売しているPickupです。もちろんオリジナルの古いFenderのPickupは所有していますが1958Les Paulの動画の説明にもあるように

エナメル線は20年以上経過すると劣化が激しく最終的には自然断線してしまいます。

Fenderオリジナルに搭載されているPickupは1980年頃に綿密な音質比較をしながらUSA製3/16インチのアルニコ#5のNew Old StockとAWG#42ポリウレタン皮膜線でクローンを製作しオリジナルは研究資料として乾燥剤を入れた箱に保管していました。しかしそれでも残念ながらとうとうDC抵抗値が上昇し始めその後3個とも断線状態に至りました。

私は1973年からバンドの仕事と共にアンプそして1974年にピックアップの開発設計の仕事も続けていた関係から当時の新品状態のFenderやGibson Pickupのデータをしっかりと記録しています。それから研究用備品のストックが自分のギター用の予備軍として待機状態のまま30年以上が経過していました。

それらをわざわざ組み立てて出展する気になったきっかけは最近の高価なギターの音質が良くないという評判をあちこちで耳にしたからです。

どうやらGibsonやFenderの伝統的スペックは情報が歪められて伝わっているようです。1974年以前のオリジナル本来のスペックのみが作り出す音の良さを僅かばかりでもお裾分けしようと考えました。ですから特にスタッガード用の備品のストックは残り少なくなっています。

コイル製作には1974年から国内量産メーカー約8割の要望に合わせた試作品製作に30年以上も活躍し続けている業務用巻き線機を使っています。これは回転数と巻きしろへの送りがシンクロされ、巻き付きテンションも一定に保つことでコイルの性能を現すインダクタンスが安定するからです。

ちなみにL.A.にある世界的に有名なVintageギターショップNormanのメンテナンスを専門に行っているL.A.Guitar worksでは同じ巻き線機を使っています。ここのオーナーに頼まれて1984年に私が中古品を見つけてあげました。私が修復した50sストラトのピックアップと彼らがそれまで使っていた200$程度の手送り巻き線機を使って修復ピックアップと比較するとパワーバランスや音質の差が歴然としていたからです。

このように量産メーカーへの安定した供給を行うに充分な多くの専門技術とプロギタリストとしての経験のみがプロがプロへ安心して提供可能なカスタムメイドPickupの製作を可能とします。


ST_1ところで多くの人が「巻き数を増やすとパワーが増す」という迷信を信じているようですが、巻き数過多はギターの全体の音域が低域に偏り輪郭が惚けてきます。高域のハリを失い透明感の薄れた濁った惚けた音質をパワーと勘違いしているだけです。

実際に電気的な出力としてのパワーに関係するのは磁力です。しかしここでも年功劣化で多少磁力が落ちた状態が良い音質になるという迷信が存在するようです。特にFenderタイプのPickupはマグネットがそのまま各弦に合わせて組み立てられているため磁性体との衝突や年功劣化による磁力低下は各弦のパワーバランスが著しく狂ってしまいます。

時々「磁力が低下するというのは本当ですか?」というような内容の質問があります。 私は過去40年間に設計や修理を通して数万個のピックアップと直接接しています。 その事実を理解しやすくするためYouTube動画へのリンクをしております。自分の耳と目による感性より活字媒体の内容を盲信する方が使うにはにはふさわしくないハイレベルのピックアップです。

1980年代のUSA製インチ規格のALNICO#5のNew Old Stockに最新のAWG42を巻いて復活させたVintage Original SpecのStratocaster用Pickupです。古いFenderは製造年によって巻き方向や磁極に違いがあります。それで所有している1968年製と思われるオリジナルに合わせS極を上にし同じ巻き方向でマグネットの長さに違いがあるスタッカートで製作してあります。当然年功劣化により磁力が半分程度に低下していますのでは再着磁して全マグネットのパワーバランスをとってあります。
1987年に出版されたPlayerの別冊(ギター&ベースサウンド・ブック)には、このUSAアルニコ入手の縁となった元Fenderの開発 エンジニアPaul Gagon氏のインタビュー及び私が書いたPickupの構造についての解説文が掲載されています。

ボビン形成用バルカンファイバーもアメリカのS社のヴィンテージタイプの製作を依頼された金型からなのですが当時のS社のエンジニアのTom(確か Holmesだったような?)の変なアイディアが原因で製品化が没になりお蔵入りになりました。それで廃棄処分される前に自分用にStockしておいた素材です。

これもあえて古いエナメル線ではなく新しいウレタン被膜線で製作しているためDC抵抗値は1970前後のFenderより1割ほど低くなっています。

理由を説明すると、近年の銅の製錬技術の進歩により最新の純銅の固有抵抗値は昔よりかなり低めです。Pickupは直流抵抗ではなく銅線径や巻き数で 決定されるインダクタンス(コイルの要素を表す交流インピーダンス)でその音質や音域が決定されますので古いPickupのDC抵抗値より大きな値にする と輪郭がぼやけクリアな音は期待できません。またエナメル線は巻き線機にかけると伸びやすくそのためコイルDC抵抗値のバラツキが大きく出ます。そして被 膜加工技術が低い時代の産物ですの表面のミクロ単位の気泡やヒビから酸化や腐食が起きやすく古い物は年々抵抗値が上がります。

今私が所有している物も数年 間から抵抗値が変化しだし箱入保存状態のままでとうとう幾つか断線しました。最近は製造工場から排出される公害問題で先進国でのエナメル線の製造は許可さ れないためエナメル色に塗装したウレタン線が多くGibsonの57Classicでも使われているものがあります。

今、音楽の仕事で使っているギターには今回出展したものと同じスペックのPickupを搭載しています。これは1965年製Stratocasterボ ディーに1957年製Telecasterのネックをジョイントした本物のVintageギターですのでボディー鳴りをPickupで再現することは不可 能ですが下記のURLに70s初期のPink Floyd と Deep Purpleのカバー曲の動画をアップしてありますので参考にしてください。ここでは当時彼らが使っていたとされる高価なVintageレコーディング機材も多用していますけど。

1973年製MarshallとJBL(K-120)の演奏時の生音に近い録音はこちらです。

基本的にFender がCBSに買収された1965年頃~1974年までのStratocasterのスペックは同一です。年代によって巻き方向や磁極の方向には違う物が登場していますが、それ以前の物もコイルの銅線が厚めの黄土色の被膜で覆われている素材を使っているという点を除いては電気的なスペックは私が修理に携わったものについては同一でした。
修理したのはどれもオリジナルのまま誰にも手を加えられていないPickupです。また中には250万円以上もする1950年代のストラトのPickupが1個だけ他社の物に交換されていたためにオリジナルの2個のスペックに合わせたクローン製作を行った事も度々あります。

偶然Fender同様Gibsonも1975年に親会社が交代しています。それ以降スペック変更が何度もなされているようですが興味がないので詳しくは知りません。ですから1974年までの両社のスペックのPickupが私自身がレコーディングやライヴで使うギターにベストです。

基本的にマーシャルやフェンダーのアンプはそれらのギターの出力に合わせて回路設計をされていますのでPickupに変な小細工的なアイディアを取り入れると鳴りの良いギターボディーの場合、情報量が減るだけです。アンプを通さない生音が良いギターであれば古き良き時代のスペックこそがパワフルで最も居心地の良い音質となると私は常に断言しております。

Cougen Koizumi


Fender Pickupの修理及び現行品からVintage Specへの改造はTinkerbellSoundにご相談ください。但し、マグネットがアルニコ#5以外の物からの改造はお勧めできません。