TinkerBellSound製HumbuckerPickUPについて

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HumbuckerPickUP01解説:Cougen Koizumi
(TinkerBellSound製Pickupの設計及び作成者)


下記の動画に登場するGibson2007年製ヒスコレは、搭載されていたHumbukerを一度分解してマグネットを交換しコイルも全て作り直したものです。

HumbuckerPickUP02オリジナルPAF搭載のLes Paul Standardを始めて手にしたのは1975年でした。当時、音楽の仕事にメインで使っていた1971年製Les Paul Customと比較しながらPickupの内容を分析しましたが「電気的特性」はほぼ同じでした。

大きな違いはボディー鳴りです。

木工構造や木の伐採地や比重が違うばかりか楽器として10年以上弾かれているので違いは当然です。この1971年製Les Paul Customのピックアップはその時外したまま歴史的参考資料として保管し自分で設計したクローンを搭載してあります。その理由はクローンで全く同じ音が再現できた事とオリジナルはハウリングを起こしやすく50W以上のアンプで活用するのがなかなか難しかったからです。

それから40年後の現代、製造から50年以上も経過したP.A.F.が当時と同じ音が出るでしょうか?

エリック・クラプトンが60年製Les Paulを使っていたのはCream在籍の1966年です。ジミー・ペイジがSince I’ve Been Loving Youをレコーディングした当時のLes Paulはまだ12歳程度でしょう。ポール・コゾフがAll right nowをレコーディングした時のLes Paulも10歳程度でしょう。古いゴールドトップを黒く塗り替え新しいHumbuckerを搭載したLes Paulで登場したJeff Beckを初めて生で見たBBAの武道館公演も1973年です。

HumbuckerPickUP04P.A.F.本来の音質を維持できるのは製造後せいぜい25年程度までと考えられます。ポリウレタン線仕様のT-Topならそれより遙かに長寿命ですがマグネットの劣化に関しては同様で再着磁が必要です。問題は上記の動画でも説明していますがエナメル皮膜銅線の年功劣化による内部酸化及びアルニコマグネットの磁力の減衰がみられます。木製のボディーやネックのように長い年月演奏に使われる事による木製部分の熟成がコイルやマグネット等の電磁気的な部品にそれが起きると考えるのは愚かです。

ギターを骨董品としての価値に執着している人達にはこれも大切な要素なのかもしれません。しかし、物理的に風化した電気的特性を手本としたレプリカという最近の非論理的な設計構想のピックアップには知性を疑いたくなります。

昔から楽器業界にはデタラメな論理によるデマが沢山はびこっていて工学部出身者のエンジニアの間ではジョークのネタになっていました。論理展開があまりにも幼稚でつじつまが合わない事だらけだからです。

また、素人が安易にマグネット交換を行うと、スライドする度に磁力がどんどん抜けていきます。Fender系のようにポールピース自体がマグネットのもの等はドライバーの先でコツコツやるだけで抜けます。ましてピックアップ同士をくっつけて遊んだりしたら致命的なダメージを与え全く音が出ない弦という状況さえ起きてしまいます。

HumbuckerPickUP03近年入手可能な新古品のエナメル線は、分子構造が荒いせいか内部の銅線まで酸化しているためDC抵抗値も上がり惚けた骨董品のレプリカしか製作できません。また、エナメル線は製造行程で排出される有害ガスの問題から先進国での製造は10数年前から禁止され塗装で色だけ似せた物も多く出回っています。それらの理由から私は絶縁性とコーティングの緻密性に優れたポリウレタン線しか最近は使いません。そして、コイルの緻密製を確保するため安定したテンションで巻きと送りがシンクロする高価な業務用の巻き線機を使う事が必須条件です。

これらは「PAFの新品当時の音の再現」という結果を出すには必要不可欠な要素です。

10.8mmピッチのボビンを使ってフェンダーに搭載した動画はこちら。

1954、57、58年製のレスポールは実際に弾いたことがあります。特に57年製は鉄心のレントゲン写真まで撮影し半年ほどかけてじっくりと分析した事があり当時の現行品である70年代初期のLes Paulと比較しながら音質研究をしました。

ちなみにL.A.にある世界的に有名なVintageギターショップNormanのメンテナンスを専門に行っているL.A.Guitar worksでは同じ巻き線機を使っています。ここのオーナーに頼まれて1984年に私が中古品を見つけて紹介してあげました。私が修復した50sストラトのピックアップと彼らがそれまで使っていた200$程度の手送り巻き線機を使って修復したピックアップとの音質の差が歴然としていたからです。

このように量産メーカーへの安定した供給を行うに充分な多くの専門技術とシビアな音質を要求されるレコーディング経験がプロがプロへ安心して提供可能なカスタムメイドPickupの製作を可能とします。

Cougen Koizumi